梨乃の笑顔を護りたい。
その願いは、いつも胸に。
プリンセスとして、強いられることの増えてきた梨乃に少しでも安らぎを。
「そろそろいこっか」
「もう、いいのですか?」
「うん。あ、でも、皆がしんどい?ごめんね、私一人馬車だから。馬に乗るのって疲れるよね。ごめん、気づかなくて。もう少し休憩しよっか」
立ち上がった梨乃だったが、慌てたようにそう言うともう一度座りなおした。
気を遣ったつもりが、逆に裏目に出てしまったと内心で焦る。
「我々の事は、大丈夫ですよ。馬に乗ることには慣れていますし。お気遣いありがとうございます」
「・・・うん」
梨乃の優しさに、クロウが笑ってそう答えた。
梨乃は小さく頷くと促されるままに立ち上がる。
梨乃は馬車に乗り込み、一行は出発した。