「舞踏会・・・?」
きょとんと目を丸くさせ持っていたティーカップを置いた。
「はい。プリンセスのご帰還を貴族たちにお披露目するために開くことを国王様がお決めになりました」
「舞踏会なんて私・・・」
「ご心配なさらず。まだひと月先の話でございます。それまでに所作、ダンス、様々なレッスンを行う予定です」
レッスン・・・。
その言葉に、うんざりした気分になる。
プリンセスなんてなりたくないのに。
私は、プリンセスなんかじゃないのに。
「明日よりレッスンを開始いたします。今日は一日自由な時間をお過ごしください」
軽く頭を下げ部屋を出るクロウ。
一人になった梨乃は小さく息を吐き出した。
息が詰まる。
戻りたい。
もう、戻ることのできないあの世界に。
そんな思いを日に日に強くしていた。