「絶対に、失敗は許さない。お父様、怒っているわ。エスターンが着々と継承者を見つけ進んでいってることに」
「はい。やはり、血を断つしかないかと」
「ええ。シドを戻すために、一度は生かしてあげたけど。もう用無しだもの。確実に仕留めてね」
それが、誰の事を話しているのかすぐに分かった。
シドは息を殺し、気づかれないように隠れた。
「チャンスは一度、あそこに行くにはあの峠を通るはず。あそこは片側が崖だから、事故に見せかけて落とせば簡単なはずよ」
「そのように」
「ええ。絶対にシドには気づかれないで。大分、私の手の内にいれられたけど、まだ未練があるみたいだから」
「わかっています」
「ま。死んでくれれば、諦めもつくでしょう」
しばらくし、声は遠ざかっていった。
立ちすくんだまま、動けないシド。
自分が離れることで、ここにいることで、護れると思っていた。
結局、それも無駄だったのか―――――。