「・・・水」
フラフラと立ち上がり外に出る。
初めの頃よりは自由度が増したが、決して騎士になったわけではない。
あの時も、ただ、梨乃に見せつけるためにユリネは自分をあそこに連れて行っただけだ。
自分を騎士にできるほど、ユリネに権限は持たされていない。
そこが、エスターンのプリンセスとヘルスターのプリンセスの違いだ。
そう言えば、こんな俺を専属騎士にしたいとか言ったんだったな。
シドは懐かしげに思い返した。
「柄にもなく、本気になっちまった」
はっ、と吐き出すように笑う。
外の水道のところに差し掛かろうとした時、人の声に気づき足を止めた。
「――――に、必ず決めて」
「はっ」
その声は、ユリネと男のものだった。