「その時の梨乃さまが、なんだか梨乃さまじゃないみたいで」

「じゃない?」

「はい・・・。いつも梨乃さまは、明るく太陽みたいな人で・・・。ポカポカ暖かくて。でも・・・、最近の梨乃さまは、なんだか心がそこにないみたいで・・・」



土で汚れた手をぎゅっと握りしめる。
ロイは視線を奏音のその手に落とし、そして前に戻した。




「ごめんなさい。騎士さまにこんな話を」

「いや」

「騎士さまは、クロウさまもですけど、梨乃さまの一番側におられる方だから。少し話しやすくて」

「気軽に話してくれていい。俺にとってもいい気分転換になる。それに、俺は騎士さまではなくロイだ」

「ロイさま」

「カノン、だったな。お前は、よく梨乃さまを見てるんだな」




ロイがそう言うと、カノンが頬を赤く染めた。
勢いよく顔を伏せ、その赤い頬を隠す。



「僕の、大切な場所を護ってくれたお方だから」



ぎこちなく、そう答えた。