「最近、梨乃さま、ここに来て下さらないんです」




悲しげに呟いたのは、カノン。
手を土で汚し、右手にはスコップを持ったまま、たまたま通りかかったロイに話をしていた。




「プリンセスは今、熱で臥せっておられる。パーティーの疲れが出たんだ。来れないのは仕方がない」

「そうじゃなくて、それまでも。こっちに戻ってから、梨乃さまのお見舞いに僕が行って会った後は・・・。それまでは、梨乃さまの方からここに何度も足を運んでくれていたんです」



シュン、と肩を落とす。
ロイは小さく息を吐きベンチにドカッと腰を下ろす。



「元気になれば、また来てくれるだろう」

「・・・そうでしょうか」

「なんだ、なにか思うことがあるのか?」

「会わないと言っても、一方的に姿を見ることはあるんですよ」




スコップを腰の鞄にしまい、パッパッと手をはたくとカノンもそっとロイの隣に腰を下ろす。