「クロウ・・・」
「はい」
「プリンセスでいようとすればするほど・・・いろんなことを・・・なくしていく気がする」
虚ろな瞳で、どこを映しているのかも乏しい視線で。
「欠けた心は・・・いつか元に・・・戻るのかな・・・」
切なげに呟いたそのまま、梨乃は再び眠りに落ちていく。
スーッと吸い寄せられるように寝息を立て始めた梨乃に、クロウは苦しげに眉を寄せた。
梨乃が、いろいろなことを諦め、我慢し、プリンセスとして在ろうとしていることをクロウは知っている。
国のため、とはいえ梨乃を想えば辛い決断だったはずだと。
「こんなにも、自分が無力だとは・・・」
なにもできない。
いつだってそうだと。
シドの事も、いつだって護れないままだ。