「ごめんなさいね。うちのシドがケガさせちゃったんでしょう?」
「・・・っ」
「まだ、治ってなかったのね。シドにはずっと言い聞かせているんだけどね」
「え?」
「中途半端に傷つけるのはかわいそうだから、ちゃんと殺してあげなきゃだめよって」
口元だけ笑った表情で、ひどく冷たい声で言う。
サーッと血の気が引く感覚に、恐ろしくなる。
「中途半端に傷つけたもんだから、シドもずいぶん気にしちゃったみたい。ごめんなさいね。シドのせいで」
「シドのせいじゃない。この傷は、シドが悪いんじゃない。私は、シドを責めたりもしてない。シドの事、そんな風に扱わないで」
「なにそれ」
「シドの瞳は、とても綺麗なの。知ってる?優しくて、心があったかくて。ぶっきら棒だけど、人想いで。シドはそんな風に、人を傷付けるためにいるんじゃないよ。シドは・・・っ、そんな光のない瞳、してなかった!」
シドの瞳が揺れる。
ぐ、と爪が食い込むほどに手を握りしめる。
ポロポロと溢れだした涙を拭いたい気持ちを抑えるようにギュッと目もとじた。