「平気です。ご心配かけてすみません」



梨乃は気にさせないように、にっこりとほほ笑んだ。
傷を見るたびに思い出してしまうシドの事。

どうか今は。
そう思いながら。




「無理、なさらないでくださいね。知らずに、我儘を言ってすみませんでした」

「え?いえ。そんな!本当に、大丈夫なんです。無理なら無理と、ちゃんと話しますから」

「そうですか?なら、とりあえず安心しておきますね」



優しく微笑む表情に、梨乃はホッとし頷いた。
二人の雰囲気は、側で見ている騎士たちにはとてもよく見えた。

穏やかに微笑み合い、互いを気遣い合う。
きっと、気の合う二人なのだと。



しかし、シドとのことを知っているロイだけは、心中穏やかではなかった。



「・・・本当に、これでいいのか・・・」




シドの事は最初から気に入らなかった。
それでも、必死な姿を見て少しは見直していたというのに。



そして、結果シドは梨乃を護った。



どんな方法であったとしても。