「プリンセスとこうしてお会いできて、本当に光栄です」

「私もです。わざわざ遠いところお越しいただき感謝しています」



梨乃の婚約者として訪れたのは、シルスタ王国の王子レノン=カーリバルだった。
会ってすぐ、舞踏会で踊った時の事を思い出した。
物腰の柔らかいとても優しそうな人だ。



「プリンセスの婚約者として選んでいただけるなんて、本当に幸せで、なんと言ったらいいか」

「そんな、大げさです」

「いえ。舞踏会の日に、ダンスを踊っていただいた時から、華のような笑顔のプリンセスに心奪われておりました」




真っ直ぐな言葉で告げられ、梨乃はどぎまぎする。
こんな風に、想いを告げられるなんて思いもしなかった。




「長旅で、お疲れでしょう。部屋を用意しておりますので、今日はごゆっくりとお寛ぎください」

「ありがとうございます」




梨乃はそう言うと席を立つ。
クロウに視線を送りその場を去ろうとした梨乃に、レノンが呼び止めた。