「昔のシドは、そんなんじゃなかった!あの女が変えたんだ!シドを、こんなにしてしまったのね!」

「・・・っ」


咄嗟に避けたコップは壁に当たり砕け散った。
砕け散った破片で頬を切る。
ツーと流れる血。



「やっぱり許せない。あのまま殺しておけばよかった」

「やめろ・・・、やめてくれ!」

「シドはここにいるのに、シドの心はここにないじゃない!どこへやったの!許さないわ!」





満たされない心。
ここにシドはいるのに。


手の届く場所にいるはずなのに。



「いる・・・俺は、ここにいるだろ。それで、いいだろ・・・!」

「だめよ。シドの全部を私は欲しいの。頭でも心でも、身体でも、全部で私を愛して。ずっと私のことだけ考えて!そうじゃないと、私許さない!」

「・・・わかった。わかったから」



宥めるように、シドが何度もそう言う。
ユリネは大きく息を吐き、シドに向き合う。



「シドを信じる。もう、離れないでね」

「・・・ああ」



ユリネはシドの身体を抱きしめ、ギュッと力を込めた。