「プリンセス、怪我を!?」

「シドが、シドがいたのに!」



慌ててクロウが梨乃を抑え込むが梨乃は構わずにシドを追おうと手を伸ばす。
それを必死に抑え込みながら、クロウはその騒動の中から梨乃を連れ出そうと梨乃を抱えるようにして移動を始めた。




「放してっ!いやっ!いやああああ!」

「もうこれ以上はいけません!けがの手当てをしなければ!」

「いやっ!シド!放してぇぇぇぇ!!!!シドォォォ!!!」





梨乃の悲痛な叫び声は痛ましく響く。
クロウは苦しげに顔を歪ませ、心を鬼にして梨乃を引っ張っていく。

梨乃の声なら届くのではとクロウ自身期待していた。


引き止められなかった自分の不甲斐なさ。
戻ってきてほしいと、願っていた。




しかし。
シドに梨乃の声は、届かなかったというのか・・・。


自分の腕の中で泣き叫ぶ梨乃に胸を痛める。




「なにを、考えてるんですか」



クロウは憤りを感じ呟いた。