それでもシドは、縋りつくように抱きついた梨乃を片手で払う。
ガシャン、と音を立て倒れた梨乃。
顔も覆われていて、梨乃だと気付かれていない。
シドは、ただ無のまま剣を振るい続けている。
赤が散り、倒れていく人を見つめ梨乃は唇を噛みしめた。
急いで身に付けている防具を脱ぎ捨てていく。
クロウたちとの約束も忘れ、必死だった。
シドが、振り上げた剣を勢いよく振り下ろしていく。
梨乃はとっさにその前に飛び出した。
「シド!もうやめて!」
両手を広げ、必死に訴えた。
一瞬ハッと目を見張り、梨乃に気づいたシドだったが、一度ついた勢いを完全に止めることができなかった。
「っ!」
梨乃の肩にザクッと突き刺さる剣。
梨乃の顔が苦痛に歪んだ。