「生きたければ、戦わなければならない。死にたくなければ殺さなければならない。幼い子供だったシドは、そこの放り込まれたんです」

「そんな、酷い」

「それでもシドは、生き残りました。シドの噂はエスターンにも聞こえるほどに。そこで、ようやく私はシドの置かれた現状を知るのです」




苦しげに歪められた表情。
シドの事を知った時、クロウはどう思ったのだろうか。
胸を痛め、届くはずのない手を伸ばしただろうか。


梨乃は、そっとクロウの手を取る。
クロウはハッとその手を見た。




「プリンセス・・・」

「うん」

「・・・。シドは向かうところ敵なし。それほどまでに、強く、残酷なほど。人々は彼を“赤髪の死神”と呼んだほどです」

「死神・・・」

「しかし、シドは突然姿を消しました。私は必死で探し、シドがエスターンに戻ってきていることを知ったんです」




梨乃の手をぎゅっと握り返す。
クロウはその温もりを確かめるように目を閉じた。