「ちょっと待ってください、取引ってなんですか?なんでシドとゆりねが?」

「プリンセスの体調不良は、ただの疲労ではありません。意図的にウイルスを取り込まさせた、暗殺未遂です」

「え・・・」




血の気がサーッと引いていく。
その先の言葉を聞きたくない。

梨乃の手が、震える。
横に控えているクロウとロイも苦しげに顔を伏せる。

いつ伝えるべきか、考えあぐねていた。
梨乃とゆりねはあの時の様子を見れば、仲のいい友人だろうと。
少なくとも梨乃にとっては。

そんな梨乃に、残酷な現実を突きつける勇気が持てなかった。




「首謀者は、ユリネ=ターナーです」




見開いた瞳から、涙がツーッと伝う。
手からシドの身分証がばたっと音を立て床に落ちた。




「う、そ・・・」

「プリンセス・・・」



見たくない。
彼女が泣くところなんて。

クロウは、居たたまれなく拳を握りしめた。