「身分証を」
ヘルスターへ渡る橋。
番人にエスターンの城でもらった身分証を渡す。
これで、こことももうおさらばだと。
「それ、もういらなくなったから、捨てといて」
「え?」
「じゃ」
戸惑いを見せる番人を置いて、シドは歩いて進んでいく。
少しでも、たどり着く時を遅らせようと。
もう、戻れない道を振り返ることはせず。
これでいいのだと。
自分にできることは、これしかないのだと。
一時の、幸せだった日々を消し去るように、一歩一歩足を進めていった。
「元の自分に、戻るだけだ」
そう、自分に言い聞かせながら。