「まったく、本来なら、プリンセスに抱きつくなど叱責するところですが・・・。今回は大目に見ましょう」
「ふふっ、ありがとう、クロウ」
クロウも、ホッとしたような表情を浮かべる。
「ロイ、カノンを連れて馬車へ」
「はっ」
「梨乃さま、本当にありがとうございました」
「うん」
ロイとカノンを見送った後、梨乃はプリンセスとしてあいさつを済ませ、追うように部屋を出た。
「シド、ただいま」
「・・・ああ」
扉の向こうに待っていたシドに梨乃は笑いかける。
シドは暗い表情のまま答えた。
「・・・シド?」
そんなシドに疑問を抱き首をかしげる。
呼びかけようとした時、突然シドの向こうから姿を現した人物に視線を奪われた。
「梨乃!」