「だって当然でしょう?父上は、エスターンを目の敵にしているもの。血の結束を盲信してる。そうなったら、父上の血を引いているのは私だけのはずだったんだもの」

「・・・」

「だから私は、父上の要求にだってなんでも従って来たの。自分のためにもね。それなのに」



苛立ちを隠せない様子で眉を寄せ怒鳴り散らすように話す。



「私の計画が台無しよ。王位を手にして、あの人を私のものにするはずだったのに!」

「あの人・・・?」

「そう。私の愛する人。残酷で、非道なほどの冷たい瞳を持った・・・。あの人を見つけ出して、私のものにして、いずれは王位を彼のモノに・・・でも、仕方ないわ。王位はあなたに譲ってもいい。でも、彼は絶対に私のものにするわ」




ギラギラと、野心に燃える歪んだ瞳。
カノンは恐ろしく感じた。




「違う・・・。僕の知っているプリンセスは、こんなんじゃない」

「なに」

「僕の知っているプリンセスは、もっと暖かに笑う人だ。誰にでも、僕みたいな末端の使用人にも、優しくしてくれる人だ」




違う、違う。
カノンは首を振る。