「カノンさまとお見受けいたす。我は、エスターンの隠密部隊。あなた様に、プリンセスから書状を預かっています。読んだ後すぐに返答をお願いいたす」

「え・・・」



久しく聞いていないエスターンの名。
そして、プリンセス。

そっと格子に近づくと外から封筒が渡された。




「梨乃さま・・・」

「時間がありません。お早目に」

「は、はい」



そうだ、今ここはヘルスター王国の城なのだと。
彼は今、敵地に侵入している侵入者だ。

見つかれば、エスターン王国に迷惑がかかってしまう。
カノンはそう思うと慌てて封を開けた。


そこには、可愛らしい丸みを帯びた字で手紙が綴られていた。



「梨乃さまの字・・・」



優しいその字にすぐにそう気づく。
カノンくんへ、梨乃の声で再生されるその文字をなぞるとその温もりに涙が出そうになった。