梨乃がこの世界にやってきて数日が経った。
なに不自由ない暮らし。
身の回りのことはすべてメイドたちがやってくれる。
だがそれが、ひどく窮屈に思えた。
「プリンセス」
部屋でぼんやりとしていた梨乃の元へクロウがやってくる。
呼ばれた梨乃はちらりとクロウを見る。
「昼食の用意が出来ましたので、お迎えにあがりました」
「・・・いらない」
「プリンセス・・・」
クロウは困ったように眉を下げた。
日に日に元気のなくなっている梨乃に、クロウは気づいていた。
しかし、どうすることもできずただ見守ることしかできなかった。
「クロウ・・・。この世界の事を、教えてほしいの」
「この世界、ですか」
「ええ。なにも知らないなと思って・・・」
梨乃の視線は窓の外へと向いていた。
クロウは少し切なげに微笑み小さく頭を下げ言った。
「仰せのままに」