「・・・?クロウ?」
クロウの呟きに気付いた梨乃が首をかしげる。
その先にあるハンカチに視線を落とすとそっとそれを手にした。
「ハンカチ?これがどうかしたの?」
「その紋章・・・。よく見せてください!」
「え・・・?」
首をかしげながら梨乃がクロウに渡す。
ハンカチには、小さな紋章の刺繍が施されていた。
梨乃にはデザインにしか見えないそれがいったいなんなのだろうかと思う。
「これは、ヘルスター王国の紋章です」
「・・・え?」
「間違いありません。国にはそれぞれ、紋章があります。私のこの衣装にもエスターンの紋章が胸ポケットにあります」
「本当だ」
「これは、ヘルスターのモノです」
「それって、どういう事・・・?」
なぜ、カノンの母の持ち物にヘルスター王国の紋章が書いてあるのか。
新たな事実に、戸惑いが隠せない。
「直ちに、調べる必要があります」