「私も驚いて、城に仕えているわけだし心配したんですけど、自分はただの庭師で、なにかするほどの価値はないからと、気のせいだろうと笑っていたので・・」
「つけられてた・・・クロウ、それって」
「はい。可能性は・・・」
やはり、カノンは連れ去られた可能性が高い。
その想いを強くした一行。
「あ、あと、・・・これなんですけども」
「これは・・・?」
アリア施設長が小さな箱を取り出し梨乃に差し出した。
梨乃が受け取りそっと中を開くと、古びたタオルケットのようなものと、ハンカチに写真が入っていた。
「カノンの母親が残した物です」
「カノンくんのお母さん・・・?じゃあ、この写真の方が?」
「ええ、おそらく。カノンはこの施設の前に捨てられていたのです。このタオルケットに大事そうにくるまれて、ハンカチを握りしめ」
「・・・どうして」
写真まで残して、どうして捨てるなんて―――。
梨乃は訴えるようにアリア施設長を見た。
アリア施設長は箱の中からハンカチを取り出し悲しげな表情で話し続けた。