「ようこそ、お越しくださいました。プリンセス」
クロウが取り決めてくれた視察と称した施設への訪問。
年配の白髪の目立つ女性に迎えられた。
「施設長の、アリア=オーランです。プリンセスにお会いできて光栄ですわ」
「初めまして。梨乃です。私も、お会いできて嬉しく思います」
穏やかな雰囲気を纏うアリア施設長は、この施設の母とも呼べる存在だ。
梨乃は来る途中クロウにそう教えられ、アリアの雰囲気を見て納得したのだった。
「今日は、カノンの事でいらしたとか・・・」
「はい。すみません、こんな大事になってしまって」
「いえ。カノンの事をこんなにわが身のように心配してくださるなんて。本当に、嬉しいんですの」
「カノンくんは、私にとってもとても大切な存在ですから」
「そんな風に言ってもらえるなんて・・・。あの子もきっと幸せに過ごしていたのね」
アリア施設長は嬉しそうに涙ぐむ。
それが、カノンへの愛を感じさせた。