「プリンセス。もうすぐ夕食の時間です。それまでごゆるりとお過ごしください」

「あ、あの・・・」

「はい?」

「そのプリンセスっていうの、やめてもらえませんか?」




梨乃が落ち着いたのを見て、部屋を出ようとしたクロウを引き止めそう言った。
クロウは面を喰らったように目を見開き首をかしげる。



「え?どうしてでしょう?」

「あの、プリンセスって柄じゃないですし。呼ばれ慣れてないので、なんだか落ち着かなくて」

「ですが、プリンセスだということには違いありませんので」




クロウはそう言うと、そのまま部屋を出てしまった。
一人残された梨乃は、居心地が悪そうに部屋を見渡す。

自分のために用意された部屋なのだろうか、女の子らしい小物や装飾が施されている。
鏡台には可愛い化粧品が揃えられているし、ベッドには可愛らしいぬいぐるみが置いてある。



「可愛い・・・」



ぬいぐるみを手にしぎゅっと抱きしめた。
心細さが少しだけ和らいだ気がした。