引っ張るようにして、近くの部屋にシドを連れ込むと、梨乃はトンとシドの胸に額をつけた。
「・・・おい」
「少しだけ・・・。終わったら笑うから。ちゃんと、プリンセスとしてしっかりするから」
震える声に、シドは黙ったまま胸を貸す。
躊躇いがちにポンポンと頭を叩く。
ギュッと服を掴まれ、そのままの態勢の梨乃に、頭に手を乗せたままじっと固まる。
ふわっと香る、梨乃の香りに一瞬理性が飛びそうになる。
それを、今じゃない、と抑え気づかれないようにふーと息を吐いた。
「・・・お前は、考えすぎなんだよ。なんでも、抱えすぎ」
「うん・・・」
「お前には、あいつらがいるだろ。しっかりじゃんじゃん使ってやればいいんだよ」
「あいつら・・・?」
気を紛らわせるように話し出した言葉。
半分は梨乃を元気づけるため。
「クロウとか、ロイとかだよ。いっつも、お前の事を考えてるやつらがいるんだからな。ひとりじゃねぇだろ」