「顔、こえーぞ」
部屋でじっとしていられず外に出た梨乃は、廊下でそう声をかけられた。
その声の主に顔を向けると、騎士の姿のシド。
「シド・・・」
「お前がそんな顔しててどうすんだよ」
「でも、心配で・・・」
「お前はプリンセスだろ。いちいち傷ついてたらきりねぇだろ」
「・・・それは」
「まあ、それがお前だもんな」
シドの声色はとても優しく梨乃の心を少し穏やかにさせた。
梨乃の行動を否定するのではなく、梨乃らしいと肯定してくれたシド。
「俺の前ではいいけど、他の使用人の前では笑っとけ」
「・・・シドの前ではいいの?」
「俺の前で、繕う必要ねぇだろ。それに、俺はお前がどんな顔してたって動揺したりしねぇし」
軽口を言うシドはからっとした笑顔を浮かべそう言った。
それが、梨乃を元気づけようとしているのだと、梨乃にはわかった。
梨乃はそっと手を伸ばし、シドの服の袖を掴む。