可能性として考えられるのは、仕事が嫌になって逃げだしてしまったか。
帰り道に何かのトラブルに巻き込まれ、帰れる状況ではなくなったか。



「・・・カノンくんが、なにも言わずに逃げるなんて考えられない・・・。庭師の仕事に誇りを持ってて、喜んでもらう顔を見るのが好きだって、嬉しそうに話してくれたんだもん」

「はい。我々も、同じように考えていますよ。私は、直接かかわりはありませんが、彼の働きは十分届いています」

「クロウ、お願い。何としても、カノンくんの行方を探って。一刻も早く無事を確認したいの」

「プリンセスの仰せのままに」



恭しく頭を下げると、クロウは梨乃の部屋を後にした。
梨乃は、祈るように手を組むとそこにおでこを乗せ俯いた。


どうか、無事でいてほしい。
何事もなくあってほしい。


カノンと交わした他愛のない会話を思い返しながら強く祈った。




「なにもできないのがもどかしい」




プリンセスとして、何ができるだろう。
強くありたいと思う。



皆を護れるように。
そう願うのに。