「あれ、カノンくんどこに行くの?」
梨乃が久しぶりに庭に立ち寄ると、カノンが荷物を背負ってそこにいた。
「あ、梨乃さま。なんだかお久しぶりですね」
「うん」
「怪我の方は、もう大丈夫なんですか?」
「うん。もうすっかり良くなったよ。心配かけてごめんね」
「いえ」
カノンとは、ドーベル王国に行く前にあって以来だった。
カノンは使用人の話で梨乃の状況は聞いていたため、心配していた。
梨乃の姿を見て、ホッとしたように笑顔を見せる。
「それで?どこに行くの?」
「ああ、里帰りです。2日お休みをいただいたので」
「そうなんだ。実家に帰るの?」
「実家っていうか、実家同然に育ったところです。僕、施設で育ったんです」
にっこりと笑って応えるカノンに、梨乃は以前家族はいないのだと話していたことを思いだした。