「ですから、これから始めましょう。兄弟、というものを」
「なんだよそれ」
「ですから、お兄ちゃんと呼んでくださいね」
「うげ、鳥肌立つ」
「私だって、吐き気がしますよ」
軽口を言いあう二人は、すっかり兄弟に戻っていた。
そのことに、シドもクロウも気づき、気恥ずかしさと小さな喜びを感じる。
長い間、こんな感情は忘れていた。
これが家族。
これが、兄弟。
「・・・俺、もう戻らない。あの場所にも、あの時の自分にも」
「シド」
「あいつに約束したんだ。俺が、あいつを護るって」
「私も、今のシドの事、誇りに思っていますよ。今のあなたが、一番輝いています」
歩いてきた道があるからこそ、今のシドがある。
それはわかっていても。
過去にとらわれず生きていってほしいとクロウは願うのだ。
兄として。
教育係としても。