「わ、悪い・・・。でも、お前、俺が・・・怖いだろ」

「え・・・」



気まずげに言われ、梨乃は自分がシドの手を払ってしまったことを思いだした。
やっぱり、あの時の事を気にしてしまっているのだと。



「ご、ごめんなさい・・・シド・・・。あの時は」

「いい。・・・それが、当然の反応だ」

「シド、でも、もう怖いなんて・・・」

「やっぱり、・・・無理だ」




思い詰めた表情でシドはそう言うと踵を返して出て行こうとする。
梨乃は慌ててシドを追いかけた。



「待って、シド!」

「・・・っ、俺は、やっぱり、騎士にはなれない」

「え・・・?」

「俺には、護るなんて向いてないんだ」




背を向けたシドがどんな表情をしているのか、梨乃からは見えない。
それでも、きっとひどく傷ついているのだと梨乃は感じた。


傷つき、心を閉じてしまおうとしているのだと。