再び先ほどの部屋に戻された梨乃。
梨乃はただ茫然と椅子に座っていた。



「プリンセス、紅茶をお持ちしました」




クロウがそう言い、梨乃が座っている椅子の側の小さいサイドテーブルの上に紅茶を置いた。




「いりません」

「今はまだ混乱していると思いますが、国王はいつもあなたの事を心配し思っていらっしゃった。それはわかってほしいのです」

「私は、樋宮梨乃です。私の家族は、あの世界にいたお父さんとお母さんで・・・。私の居場所はここじゃない!」




ここじゃない。
私の居場所は。

私が、いたい場所は。



梨乃はまっすぐにクロウを見た。




「あなたの居場所は、もうあの場所にはありません。戻ったところで、あなたを覚えている人はもういないのですから」

「―――――っ」



クロウは躊躇なく告げた。
梨乃はその言葉に息をのみ、なにも言えずうつむいた。