「自分が浚われ、なにもできなかったと。お前たちは自分を護ってくれるのに、護れなかったと。泣いていた」

「・・・っ」




ナトリは、3人の顔を順々に見やり、最後にシドを見つめた。
シドは揺れる瞳でナトリと視線を交えた。
震えそうになった唇を固く閉じ、拳を強く握る。




「あのような恐ろしい目にあっても、自分の事より、自分に仕える従者の事を心配するような、心優しいプリンセスだと、国王様も言っておられた」

「・・・あのお方は、そう言うお方です」

「そうだな・・・。お前たちは、幸せ者だと思わないか?自分が仕える主にそこまで想ってもらえるのだ」

「・・・はい」

「その想いに、応えたいと思わないか?・・・シド?」





ずっと黙っているシドに、問いかけるようにナトリが名指しで言った。
シドは目を見張り、少しの動揺を見せる。



「・・・俺は、」

「プリンセスに、お会いしてきなさい。それから答えが見つかったら、また私のところに報告においで」

「・・・・はい」




シドが、迷っていることに気づいていた。
初めの決意が、揺らいでいること。