梨乃は、クロウたちの部屋に行く前に、国王のいる執務室まで向かった。
いまだに、父親だという実感も持てず、自分から会いに行くことのなかった梨乃。
執務室の前には、見張りの家臣が立っていた。
中に国王がいるという事だと梨乃は緊張に深呼吸をした。
「あ、あの。国王に会いたいんですけど」
「プリンセス?・・・しょ、少々お待ちください」
普段現れない梨乃の登場に驚きながら確認のため中に引っ込んだ家臣。
梨乃は扉の前で立ち、呼ばれるのを待った。
こんな風に会いに来てよかっただろうか。
今はきっと、今回の件で忙しい時かもしれない。
「プリンセス、どうぞ。あの、お身体の方は」
「大丈夫です。痛みはあるけど、平気です。ありがとうございます」
頬に大きなガーゼを貼った痛々しい姿はやはり目立つか、と梨乃は思った。
こんな姿で会いに来てよかったのだろうかと。
「失礼します」
中にはいると、国王は椅子に座りたくさんの書類や本の置かれた机に向かっていた。