「そして17年・・・。まだ完全とはいえんが、少しずつこの世界は再建されていっている。魔術師が施した術も解ける時がやってきた。だから、こうして呼び戻したのだ」

「ちょっと・・・待ってください・・・あの、よくわからなくて」

「リノ、お前はわしの子なのだ。この世界で生まれた、エスターン王国のプリンセスなのだ」




優しそうな瞳に見つめられる。
でも、そうですか、なんて言えるわけがなかった。

だって、知らないのだ。
そんなことを言われたところで信じられるわけがないのだ。




「ちが・・・、私には、ちゃんと家族が・・・、友だちだって、ずっと生きてきて・・・。当たり前の毎日があって」

「だが、最後の日誰もそなたの事がわからなかったのではないか?」

「あ・・・・・・」




―君は誰・・・?




息をのんだ。
あれは、現実だった。

冗談でも、夢でもなんでもなくて。
本当に、覚えていなかった――――?


「魔術師の術の効力はもって20年だった。だが、そこまで持たなかったのだ。効力が切れれば、リノがそれまで関わってきた人から梨乃に関する記憶が消えるよう、リノに術をかけていた」