「プリンセス。私がお連れします」



クロウが梨乃に寄りそう言うと梨乃を抱え上げた。
梨乃は、黙ったままクロウの腕の中でギュッと目を閉じた。




「シド、エスターンからの応援が来るはずです。あなたはそれと合流してください」

「・・・ああ」



動揺した心。
梨乃に払われた手を見つめながらシドは苦しげに顔を顰めた。



あの時―――。



梨乃があの男に馬乗りにされて、殺されそうになっているのを見た瞬間、血が頭に一気に登って。



気づけば男を斬りつけていた。




あの頃のように。
ただ、人を殺すだけの兵器だった、あの頃のように。




「・・・変れるわけ、ないんだ」




変れたと思ってた。
自分にも、護りたいものができたことが嬉しかった。