そんな梨乃を見て、傷ついたようにシドはなにも言えず立ちすくむ。 クロウはそんな二人を見て、眉を寄せ目を閉じた。 「・・・ご、ごめ・・・あ、ち、ちが・・・」 混乱した梨乃が、震える声をあげる。 違う。 怖がる意味なんてないのに。 でも、手を伸ばされた一瞬、事切れる寸前の男の顔が。 背中に散る赤が。 冷たい表情のシドが。 廻るように思い返された。 心が、拒む。 恐怖に、その赤に。 心が、追いつかない―――。