「わしの名はミラン=エドワード。このエスターン王国の国王である」
「エスターン・・・?」
いきなり訳の分からないことを言いだした。
梨乃は口をあんぐりとあける。
しかし目の前の男はまるで真剣な表情で、堅実そうな人となりは冗談を言いそうには見えない。
「今から17年前、この世界は荒れ果て混沌としていた。領土を奪い合い、戦が絶えず・・・。そんな中リノ、お前が生まれたのだ」
「え・・・?」
「長く授からなかったようやく生まれた我が子だ。大切に、大切に育てたかった。わしらの手でな・・・。しかし、それは叶わなかったのだ」
戸惑う梨乃を置き去りにミラン国王は話を続けていく。
その時の事を想いだすかのように苦しみの表情を浮かべながら。
「混沌とした世界の中、そなたの命だけは護りたかった。だから、そなたを異世界へ飛ばすことにしたのだ」
「・・・あ、あの・・・」
「この世界には魔術師がおってな。その者に頼んだのだ。安全な世に逃がしてくれと。わしらは、リノを安全な地球という星へ飛ばした。そこでなに不自由なく生きられるよう手筈もふんでな・・・」
まるで真実のように語られる言葉。
梨乃の表情は次第と青ざめていった。