外部との連絡のためか、外に出た男。
残された梨乃は、先ほどの男の言葉を頭の中で繰り返していた。
――これは、ルベルト国王の指示のもとだ
それは、ルベルト国王が裏切ったという事。
それはすなわち、この国全体が、という事だ。
城下では、誰もが歓迎してくれていたように感じた。
とても楽しく、笑顔の絶えない町だと。
国民のみんなは、知っているのだろうか。
「私が・・・」
私が未熟なせいだ。
私が、まだちゃんとプリンセスとして認められていないから。
梨乃には、そう思えてならなかった。
ドーベル王国は、プリンセスのお披露目の舞踏会にも出席していなかった。
それは、都合がつかなかったわけではなく、認められていなかったからなのだ。
どのタイミングで裏切りを決めたのかはわからないが、それでも、実行に移させたのは自分の至らなさなのだろうと。
争いあってほしくない。
戦なんて、なくなればいい。
どうか、誰も傷つかないで。
願う事しかできないことが、もどかしくてたまらない。