梨乃は、ふと自分を踏みつけている男の履いているブーツに目をやった。
そこについている紋章を目に止めると、それに見覚えがある。



確か、つい最近見たはずだと記憶をたどると、その答えにたどり着き目を見張った。



「あなた・・・、ドーベル王国の」

「・・・察しのいい奴は嫌いだな」



男は足を外し後ろに引くと思い切り梨乃の腹を蹴り上げた。
大きくむせ返り咳き込む梨乃。




「まぁ、ばれたところで、どっちに転んでもお前らエスターンは終わりだ」

「どうして!あなたたちは、エスターン王国の傘下の国でしょう!?そんな、裏切るようなこと・・・」

「今の世の中、頭のいい奴が勝つんだ。自分にとっての利を見極めれる人、国がな」

「それが、国を裏切って、自分の護るべき相手を裏切った理由・・・?」




わからない。
利益のために、人を裏切り、国を裏切り、手を汚すことも厭わず。
そんなことをして、何が残るというのだろう。




「あなただって、ルベルト国王を護ってきたんでしょう!?」

「なにか、勘違いをしていないか?」

「俺は、今までもこれからも、ルベルト国王を裏切ってなどいない。俺の命は、ルベルト様のために在る」

「え――――」

「バカなお前にも、わかるように言えばいいか?」




息をのむ。




「これは、ルベルト国王の指示のもとだ」