一瞬、ピンとこなかった梨乃だったが、それがミラン国王の事だと気付く。
国を相手に交渉するということだと知りその規模の大きさに絶句した。


しかし、考えてみれば自分は今プリンセスという立場なのだ。
そんな自分が浚われるということはそういう事なのだと気付く。



――ターナー国王が狙っているのは、おそらくプリンセスです



少し前、クロウが言っていた言葉を思い出した。
今になって実感する。


プリンセスになるということは、こういう事なのだと。




「よ、要求は・・・」

「この国を、ヘルスター王国に受け渡せ」

「なっ!」

「さもなくば、プリンセスの命はない。今頃王さまは青ざめてるだろうよ」




梨乃は身体を捩り逃げ出そうとする。
男は梨乃の背中を踏みつけ動きを止めた。



「っ」

「無駄だ。ここで死のカウントダウンをゆっくり待ってるんだな」

「・・・っ、きっと、助けに」

「ああ、あの無能な騎士たちか?あいつらなら睡眠ガスでおねんね中だろうよ」



絶望の音が、聞こえた気がした。