「あいつに、落ち着けって言っても無駄だって」

「無駄でもなんでも、しっかりしていただかなければ!」




ハラハラと梨乃を追いかけるクロウ。
そんなクロウを呆れ顔で見るシド。
昔から、生真面目で融通の利かない奴だ、とひっそりと考えた。




「ほら、見て。ロイ、仮面だって」

「はい。こちらの方がプリンセスにはよくお似合いかと」




露店に出ていた装飾の施された仮面。
それはどれも奇抜な模様奇抜な色をしていてとても目につく。




「ロイまでなにをしているんですか」

「・・・すみません、クロウさま」

「他国の文化を知ることだって、立派な勉強でしょう?」

「ですが・・・」

「ずっと眉間にしわを寄せて、疲れるでしょ。ほら、クロウはこれね」



梨乃がクロウに手渡したのは、口を三日月のようにしてにっこりと笑う猫の仮面。
色鮮やかな装飾で妖しくも可笑しげな仮面だった。