「妙なものって・・・」
「いや、はっきりとは。すみません、不安になることを言ってしまい」
不安げに陰る表情にロイが慌てる。
自分の表情でロイを慌てさせたことに気づき梨乃がハッとしたように笑顔を作った。
「ううん。大丈夫」
「とりあえず、我々で用心しておきましょう。プリンセスはあまり気になさらないように。それが相手に伝わるのもあまりよくありませんから」
「うん。そうだよね。わかった」
クロウの言葉にうなずいた梨乃は、少し不安げに瞳を揺らす。
初めての公務、無事に終わってほしいと強く願った。
「とりあえず、今日はもう昼も過ぎていますし、初日ですから夕食まではゆっくりしていてください。明日の朝は、城下を見に行きましょう」
「うん」
公務とはいえ、城下町に行けることは梨乃にとって嬉しいことだった。
気分転換にもなるし、他国の城下町にも興味があった。
エスターンとはどこが違うのだろうとワクワクする。
表情が明るくなったことに、クロウたちはホッと肩をおろした。