そして、公務当日。
緊張した面持ちの梨乃を乗せ、馬車は走り出した。
「馬車って、ちゃんと乗ったの始めて」
「一度抜け出した時に乗ったのではなかったですか?まぁ、あれは荷馬車でしたが」
「う・・・」
鋭いことを突っ込まれ、梨乃は肩を竦める。
そういえばと思いだし気まずげに目を反らした。
「冗談ですよ」
クスクスと笑うクロウに梨乃は顔をあげると頬を膨らませた。
普段言わない人が言うと冗談に聞こえない。
「シド、大丈夫かな・・・」
「気になりますか?」
ボソッと呟いた言葉を拾われ、梨乃はハッと顔を染めた。
「き、気になるというか・・・。その、だってほら、初任務だし」
しどろもどろに堪え俯いた。