「目が覚めましたか」



梨乃が目を覚ますと目の前には見知らぬ男の顔があった。
ビクッと体を震わせ身体を起こす。

そこはどこか部屋の中だった。
梨乃は大きなベッドに寝かされていたようだった。




「え・・・あ、・・・あの」

「お初にお目にかかります、プリンセス」




恭しく頭を下げられ戸惑いに瞳を揺らす。
男は凛々しくすっとした瞳、薄くキュッとした唇。
真っ黒い少し長めの髪で前髪を横に流した知的そうに見える男。
キラッと光る銀淵の眼鏡をくいっとあげながら、きちっとしたスーツのような真っ黒な服を着ていた。

胸元には銀の刺繍で紋章。




「私は、これからプリンセスの教育係になります、クロウ=ラグーンと申します。クロウとお呼びください」

「ちょ、ちょっと待ってください・・・。いったい、どういう事ですか?」



状況にも言っている事にもついていけず戸惑いを隠せない梨乃。
そんな梨乃にクロウは深いため息を吐いた。

なぜため息を吐かれなければいけないのか・・・と梨乃は思う。