「プリンセスとしての公務を1週間後に予定しております」


朝食の時、横に控えていたクロウから告げられた。
梨乃はもぐもぐと咀嚼しながら顔を上げる。




「一番離れたドーベル国の王城への訪問になります」

「ドーベル国」

「エスターン王国の中の一国です」



勉強を始めた梨乃だが、まだ国の名前をすべて覚えられていない。
そんな国あったか、と思い返しながらクロウの話を聞く。




「ここ数か月、月に一度の国王が集まる王会議にも理由をつけ欠席ているため、様子見をかねての訪問になります」

「それって、私でいいんですか?」

「ドーベル国は、先日の舞踏会も欠席されていました。そのため、プリンセス誕生のあいさつという名目で偵察に行きたいのです」

「そっか・・・」




偵察・・・あまりいい響きではないその言葉に梨乃は小さく呟いた。
なにかを、疑っているということ。
それは、とても悲しいことだと。



「わかりました」




梨乃はそう言ってほほ笑んだ。