「私が、この世界を平和な世界にする。でも、まだ今の私にはその力はないから。もっと勉強して、知って、力をつける」
「・・・っ」
「命を懸けて護ってくれるって言ってくれたクロウのためにも。私のために、騎士の道を選んでくれたシドのためにも。国のために戦ってくれるこの城のみんな、この国を明るく灯してくれている国民のみんなのためにも」
梨乃のはっきりとした言葉は澄み渡る空にすっと溶けていく。
サラサラと風が靡き、花たちを優しく揺らした。
シドは息をのみ、梨乃を見つめる。
「なんて、偉そうなこと言ってるけどね、どれだけ先になるかわかんないけど」
そう言って照れたように笑う。
「まずこの世界の文字を勉強しなくちゃなの。今もね、クロウにもらった文字盤を見ながらこれを読んでるんだけど・・・」
ぐいと腕を引っ張られ、次の瞬間梨乃の身体はシドの腕の中。
きょとんと目を丸くした梨乃の膝から本がドサッと落ちた。
「え、あ、シド・・・?」