少しずつ、騎士たちの生活は日常に戻って来た。
傷の治ったものから任務に戻り、ヘルスター王国の攻撃もいったん落着き再び日常へと戻されていく。



「なにしてんだ?」



庭のベンチに腰かけていた梨乃を見つけたシドは不思議そうに尋ねた。
梨乃は手にしていた分厚い本から視線をあげる。



「あ、シド」

「なに読んでんだよ」

「これ、この世界の歴史書。クロウに聞いたらこれが一番正しくて詳しいって貸してくれたの」

「ふぅん」



シドは梨乃の隣に座る。
ちらとその本に視線を落とすと、細かい字で挿絵と共にぎっしりと埋め込まれている。
ウンザリして肩を竦めその本から視線を反らした。



「俺は無理。頭使うのは性に合わねぇ」

「ふふっ。でも、私も少し疲れちゃった。せっかくシドに会えたから少し休憩しようかな」



にっこりと笑うと本を閉じた。
そんな梨乃を見て、シドはどぎまぎと視線を揺らした。