「ああ、僕にも力があれば、梨乃さまをお守りできるのにな」



土に汚れた自分の手を見下ろし、切なげに呟く。
戦う事の出来ない弱い自分。
花を愛することしかできない、無力な自分が初めてもどかしく思えた。



「護る方法は、戦う事だけではありませんよ」

「・・・クロウさま」

「あなたには、プリンセスも素直な気持ちを話せるようですから」



クロウはそう言うと肩を竦めた。
追い詰めてしまう事しかできなかった。
梨乃を想えばこそ出た言葉すら、梨乃を傷付けてしまう。

そんな自分なんかよりもずっと、梨乃のためになっていると思った。





「なかなか、うまくいかないものですね」




吐き出すようにそう言うと、クロウは空を見上げる。
澄み渡るような蒼に、自分が不釣り合いに思えた。