「不思議なプリンセスですよね」



建物の陰に隠れていたクロウに声をかけたのは、梨乃と別れたカノン。
ハッと顔をあげ、カノンを確認すると気まずげに眼鏡をくいっとあげた。



「ばれていましたか」

「慌ててはいりかけていたところが見えたので」



カノンと話している姿を見て、咄嗟に姿を隠したのだった。
クロウが庭をチラリと見ると、もうそこには梨乃の姿はない。
カノンはクロウの視線の先をチラリと見る。



「部屋に戻られましたよ」

「そうですか」

「まっすぐで、綺麗なプリンセスですね」

「ええ・・・。心配になるくらい、一生懸命な方です」

「プリンセスでいるって。戦のない世界を作りたいからって、言っていました」



初めはあれほど拒絶していたこの世界を、梨乃なりに受け入れようとしている。
プリンセスという重い荷を乗せられ、それでも笑って前を向こうとする。

現実を受け入れようとし、それ以上に何かをしようとする。
誰かのために、ただまっすぐに。



「だからこそ、護りたいと思うんです」



こんなにも、護りたいと思う人なんて。
思ってもみなかった。