「今回の戦が、私のせいだったらどうしよう・・・。私のせいで、皆が傷ついたらどうしよう・・・っ」
怖い。
それは、とてつもなく。
傷つく人を見ることも。
ましてやそれが自分のせいだなんて。
当たり前のように守ろうとしてくれる人たちが。
命をかけるとまで言ってくれる人たちが。
「誰にも、傷ついてほしくない・・・」
そう願うことは、あの真っ直ぐな言葉の前じゃいけないことのように思えた。
「梨乃さま・・・」
「戦なんて、嫌い。どうして戦わなくちゃいけないの」
「うん・・・。僕も、戦は好きじゃない。たくさん血が流れるし、大切な人の命が消えることだってあるんだから」
梨乃の腕に触れた手に力を込め、一言一言確かな声で紡いでいく。
梨乃はポタポタと涙を零しながらカノンを見る。
「前、クロウさまが言っていたんだ。エスターン王国は決して戦を起こす側にならない。この国の騎士は、攻めるために在るんじゃない。護るために在るんだって」
「まもるため・・・」
「ヘルスター王国の王さまも同じ考えになってくれれば、戦なんて起こらないのにね」
切なげに笑ったカノン。